●故障診断の例●

実際に故障診断し、修理したものです。お客様の名前は匿名にしております。

   

お客様

○○ ○○様

主な用途 通勤

約10km

 登録番号  年式 型式 車台番号 エンジン型式
 岡山50☆0000  平成6年8月 E-SV40 SV40-0008142 4s

<症状確認>問診・・・・お客様の証言は?
 会社に行こうとすると、朝エンジンがかからないことがあります。 
 キーをまわすキュルキュル音がします。(スターターモーターは回っている様子)
 そのときは五分くらいかからないんですが、しばらく立ってから回すとエンジンがかかります。
 日によって500mくらい走るとエンストすることがあります。
 順調に走行しているとき、信号待ちで止まったり、ハンドル切ったら止まったり、
 坂道でエンストすることがあります。 まったく症状のない日もあります。

<スタッフの想像>
 このケースは整備士泣かせのパターンです。お客様の自動車はいつも症状が出ているわけではありません。
  しかしヒントは少しあります。エンジンは冷間時と温間時では制御が異なりますが、いずれの時も同じ症状です。
  正常にエンジンがかかるときは全く問題が発生していません。
 この問診は故障箇所の探求のヒントになり、診断整備費用を抑えるコツになります。
 お客様の時間を少しいただいて、診断スタッフがお客様に確認します。
 少しくどく思われるかもしれませんがご協力ください

<過去の整備歴の確認>
以前この車の何を整備しているか整備カルテを確認します
 1999年6月  当社にて中古車販売 納車整備
当店にて販売した車でした。中村自動車では販売時に納車整備した中古車は1年間の保証を付けています。

<再現性の確認>
問診どおり症状がでるかどうか確認します。
問診の内容から、燃圧計とオシロスコープをセットし燃圧と点火波形を測定しながら再現性を確認します。  
 2000年6月13日  本日お客様からお預かりしました。冷間時、温間時とも全く症状がでません。
 2000年6月14日  朝始動、走行テストを試みました。
 始動後約5分後にエンジン停止、クランキングすると始動可能。
 その後症状がでなくなりました。
 さらに、アイドル状態で放置してみました。2時間後にエンストしました。
 このとき燃圧は0.3kg/cm2に低下していました。
 再始動するとすぐにエンジンはかかりました。
 このとき燃圧は即時2.9kg/cm2に回復していました。

<この車の制御方法の確認>
自動車によって、いろいろな技術が導入され、数々の制御方法があります。
その車のシステムを知らなくては故障の原因はわかりません。
今回はロータスが発行している解説書を確認しました。  
 点火制御  ■エンジン制御コンピュータから点火プラグまでの回路■
 ◎ECU-イグナイタ-IGコイル-デストリビュータ-ハイテンションコード-点火プラグ方式◎
 ECUから点火信号Igtがイグナイターに入力されると1次電流が流れ、1次電流が検出されると
 Igf信号がECUに帰る。 Igfが4回連続検出されないと燃料カットする。
 燃料制御  燃料ポンプ駆動条件は、クランキング時STA信号(スターター信号)がECUに入った時と
 NE信号がECUに入った時、両者ともサーキットオープニングリレー(SOリレー)開でポンプに
 12vがくる。
 ダイアグ検出項目  Igt、Igf、NE信号は検出項目
 NE信号
 (クランク角信号)
 デスビ中のピックアップコイルで90度ごとNE信号検出
この自動車は事故を起こしたときの安全確保のため
・点火信号のフィードバックがないときはインジェクターを停止
・エンジンが停止したときは燃料ポンプを停止
する構造になっているようです


<症状発生時のデータ取り>
 2000年6月14日  なかなか症状が再現しません2時間後やっと症状がでました。
 このときダイアグ表示はでませんでした。燃圧0.3kg/cm2に低下していました。
 点火波形は一瞬のため見落としました。さらに4時間アイドル後再現しました。
 約20秒で燃圧2.9kg/cm2から0.3kg/cm2に低下(燃料ポンプ電源0v)しました。
 その間NE信号は出力していました。
原因はポンプの電源が落ち、燃圧が下がるためガス欠状態でエンストしている様子です。

<関連部品のチェック>
ダイアグ表示はありませんでしたので点火系統の可能性はなくなりました。
NE信号が出ていましたのでSOリレーまでは信号が来ています。
消去法で考察するとSOリレー以外に原因はありません。SOリレー単体を点検してみます。

 2000年6月14日  SOリレーを確認しましたが外観、抵抗値、作動は問題ありません。
 ただし温風で暖めると10Ω増加します。
 念のため原因がSOリレーから燃料ポンプ間の配線である
 可能性を考慮しか確認してみましたが問題ありません。
 燃料ポンプ強制駆動端子FPと+Bを短絡しSOリレーを無視する回路を構成し
 再現性を確認してみました。症状はでません。更に確認しました。症状はでません。
 短絡を解除しテストしました。症状がでなくなりました。
 2000年6月15日  症状はでません。
 原因は燃料ポンプの電源がなんらかの原因で切れることだと考えられます。
 燃料ポンプまでの回路は「バッテリー-メインリレー-SOリレー-燃料ポンプ」です。
 メインリレーが原因なら同時にECU電源も切れるので該当しません。 SOリレーなら該当します。
 しかし中間の配線断線も可能性として残っています。
 ただし、故障発生部位としてリレーの可能性のほうがはるかに高いことが想像できます。
 症状が再現しなくなったので確認ができなくなりましたが、お客様に説明しSOリレーの交換を勧めました。

<部品の交換>
 サーキットオープニングリレーを交換し再現性を確認する。
再現性を確認します。
 2000年6月16日  症状でない
 2000年6月17日  症状でない

<結論>
 サーキットオープニングリレーのコネクター接触不良かサーキットオープニングリレーの経年変化により、
 コイルの温度変化による抵抗値が増大し、コイル電流の低下が起因して
 SOリレーがOFFになっていたと思われます
2001年6月現在 症状は発生していません


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