2 列強の太平洋諸地域分割
アフリカ分割と同じ時期に太平洋諸地域も列強によって分割され、20世紀初めまでに太平洋諸地域はイギリス・フランス・ドイツ・アメリカによって分割領有された。
イギリスはオーストラリア・ニュージーランドとその周辺の諸島を領有した。
オーストラリアは、17世紀中頃にオランダ人の航海者タスマン(1603〜59)によって発見された。そのため現在のオーストラリアは100年以上にわたってニュー=オランダと呼ばれた。
18世紀後半、イギリスの探検家クック(1728〜79)は第1次航海の際、タヒチ・ニュージーランドを経てオーストラリア東海岸に上陸し(1770)、イギリス領有を宣言した。
イギリスは、1788年に囚人750人と役人及びその家族からなる総数1100名の最初の移民を送り込んだ。11隻の船には移民に伴われた29頭の羊・6頭の牛・7頭の馬がいたといわれている。
以後オーストラリアは流刑植民地として開拓が進められたが、19世紀に入ると牧羊業が発展した。1829年からは自由移民が開始されて移民が増加し、内陸への開拓が進んだ。1850年代に金鉱が発見されてからは移民が激増したが、1880年代には有色人種の移民を制限する白豪主義がとられるようになった。
1901年にはオーストラリア連邦が形成され、イギリス帝国内の自治領となった。
しかしこの間、先住民のアボリジニーは開拓とともに奥地に追われ、タスマニア島の先住民は1876年に絶滅した。
ニュージーランドは、1642年にタスマンによって発見されたが、1769年にはクックが探検を行ってニュージーランドをほぼ一周した。そして1840年に原住民のマオリ族との条約によってイギリスの直轄植民地となった。
以後植民が進められ、1907年にはイギリス帝国内の自治領となった。
なおニュージーランドでは1893年に世界で初めて婦人参政権が認められている。
イギリスはオーストラリア・ニュージーランドの他に北ボルネオ(1888)・ニューギニア島の東北部(パプア、1884)やフィジー諸島(1874)・トンガ諸島(1900)を領有した。 フランスは、オーストラリア・ニュージーランドの植民地経営を進めるイギリスに対抗してメラネシア・ポリネシアへの進出をはかり、ニューカレドニア島(1853)やタヒチ島を含むソシエテ諸島など南太平洋西部の諸島などを領有した。
アメリカは、米西戦争(1898)でフィリピン・グァムを獲得し、また同年ハワイを併合した。
フィリピンでは、19世紀後半になるとスペインの統治に対する不満・批判が高まり、ホセ=リサールらの活動によって民族主義が高まった。
ホセ=リサール(1861〜96)は、スペインで医学を学んだ後、ベルリンで小説を発表してスペインの暴政を暴露した。その後帰国したが小説の反響が大きく、当局の迫害が厳しいため日本を経てヨーロッパに亡命した。1892年に再び帰国してフィリピン同盟を結成し、文化と経済の向上をはかったが逮捕され流刑となった。
リサールの逮捕の日に結成された秘密結社「カティプーナン」は独立を目ざして1896年に蜂起し、政府軍と激しく戦った(カティプーナンの反乱、1896〜97)。リサールは反乱の関係者として銃殺された。
アギナルド(1869〜1964)は、1896年のカティプーナンの反乱に参加し、翌年選挙によって革命政府大統領の地位についた。しかし、革命軍は次第に追いつめられ、和平交渉の結果成立した協定によってスペイン政府が多額の賠償金を払うかわりに、全フィリピン人の武装解除が定められ、アギナルドはシンガポール・香港に亡命した(1897)。
1898年4月、米西戦争が起こるとアギナルドはアメリカ軍の援助で帰国し、独立を宣言して再び大統領となった(1898.6)。
アギナルドはアメリカ軍に協力することによって独立の承認を得ることを期待していたがアメリカに裏切られた。アメリカはスペインから直接フィリピンの統治権を譲り受け(2000万ドルで買収)、フィリピンの独立を認めなかった。
そのためアギナルドは1899年1月憲法を発布してフィリピン共和国の大統領となり、独立を目ざして反米武力闘争にふみきったが、1901年にアメリカ軍に捕らえられ、釈放後は政治的活動から引退した。
フィリピンの独立運動はその後も続いたが、1902年4月までには鎮圧され、フィリピンはアメリカの植民地となった。
ドイツは、太平洋進出にも遅れ、1880年代以後分割に割り込んでいった。
1884年にはニューギニア島東部を占領し、イギリスと南北に分割してニューギニア島東北部を領有した。また同年ビスマルク諸島も領有した。
1886年には赤道以北のマーシャル諸島を領有し、1899年には米西戦争に乗じてカロリン諸島・マリアナ諸島・パラオ諸島をスペインから買収した。
なお日本は第一次世界大戦中に赤道以北のドイツ領諸島(南洋諸島)を占領し、戦後マーシャル諸島・カロリン諸島・マリアナ諸島・パラオ諸島を委任統治(国際連盟から統治を委任される)領として、実質的には植民地として1945年まで支配してきた。太平洋戦争中、これらの諸島では日米両軍の間で激闘が行われた。
こうして太平洋上の小さな島々に至るまで、イギリス・フランス・アメリカ・ドイツによって分割占領された。